大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(ネ)282号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

(一) 記名株券の株主名簿上の最終の株主が、その株券を盗取され又は紛失もしくは滅失した場合(以下、右の各場合をまとめて「喪失」という。)、法律上、右株主は、喪失株券を無効とするため、公示催告の申立をし、除権判決をえて株主の形式的資格を回復しうる権利を与えられているのであるから、右株主の公示催告の申立及び除権判決の取得が、公示催告の申立以前に当該株券を善意取得した者に対して不法行為を構成するのは、右株主が公示催告の申立以前に善意取得者の出現したことを知りながら、この者の株主の資格を奪うことを目的として、公示催告の申立をし、除権判決をえる等権利の濫用に当たる場合に限られるものと解すべきである。本件において、被控訴人長田が、本件公示催告の申立をし、本件除権判決を取得した経緯は前認定のとおりであり、全証拠をもつてしても、被控訴人長田が、控訴人において本件(一)株券を善意取得したことを知りながら、控訴人から本件株式の株主としての形式的資格を奪うことを目的として、本件公示催告の申立をし、除権判決をえたと認めるに足りない。かえつて、<証拠>を総合すると、被控訴人長田は、昭和四〇年ころ本件(一)株券を取得して被控訴会社の株主名簿上の株主となり、爾来本件株式について株主名簿上の株主であること、被控訴人長田は、本件(一)株券を自らはもとより、第三者を通じてであつても処分したことはなかつたこと、被控訴人長田は、被控訴会社から本件公示催告申立当時まで、本件株式につき配当金及び株主総会の招集通知を受けていたこと、被控訴人長田は、昭和四八年六月転居し、その際、本件(一)株券を紛失したと信じていたこと等の事実が認められ、これらの事実によると、被控訴人長田が、本件公示催告の申立をし、除権判決をえた当時、本件(一)株券の善意取得者が出現しなかつたと信じ、かつ、右転居の際に本件(一)株券を紛失したと信じたことには、相当な理由があつたものというべきである。したがつて、被控訴人長田の本件公示催告の申立及び本件除権判決の取得が不法行為を構成する旨の控訴人の主張は理由がない。

(園田治 菊池信男 柴田保幸)

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